1型糖尿病のトライアスロン、血糖値、栄養日記-アイアンマンコナを目指して-

一型糖尿病20年目の管理栄養士です。アイアンマンコナ出場を目指してトレーニングの様子や血糖コントロール、栄養管理についてアップしていきます。

佐渡国際トライアスロンAタイプ2022 (栄養編)

佐渡のレースからもう1ヶ月近く経とうとしている。

レース後も仕事がドタバタで中々落ち着かない日々が続いていますが、前回に引き続きレース当日の振り返りを。

 

前日の準備がトラブル続きでしたが、そこそこ睡眠も取れ、起床時は低血糖

朝食はカーボ150g程度を摂取。

トレシーバ(時効型インスリン)をいつも通りの量投与。

 

レース当日の血糖値のデータです↓

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起床時が低血糖だったため、食後高血糖になる事も懸念。

諏訪湖の時のように血糖値が下がらない時の対策としてバイクのベントーボックスにルムジェブ(超速攻型インスリン)を準備しておきました。

バイクは距離も長いため、ベントーボックスはインスリンとパンク修理工具などでいっぱいに。

 

リブレのデータの通り今回は高血糖には全くならず😮‍💨

どちらかというと低血糖傾向で補食を常に摂りながらって感じでした。

 

今回のレースで準備した補食はシンプルに!

 

SNSなどで補給食の情報が色々溢れていますが、僕が意識している事は炭水化物の種類。

 

吸収の速いものと血糖値が上がりづらいものの2種類。

用意したものは

吸収の速いものとして

・モルテン320kcalドリンク×3P

・モルテンジェル6P(普通3P、カフェイン入り3P)

アミノバイタル アミノショット(109Kcal)

3P

小計1887Kcal

吸収がゆっくり、血糖値が上がりづらいもの

・トウモロコシデンプン750mlのボトル一本に対し40g(160Kcal)に調整できる様に小袋に小分けした物を8P(1280Kcal)分用意。

それにプラスしてアミノバリューを2L分(362Kcal)用意。

小計1642Kcal

合計3529Kcal

 

モルテンはご存知の方も多いかと思います。

簡単にエネルギーの吸収についてお話しすると栄養素は基本的に小腸で吸収されます。

糖分をエネルギーとして利用するためには、ブドウ糖として小腸に速く送られる事が求められます。

お米はアミロペクチンアミロースというブドウ糖がいっぱい繋がった状態のもの。これは口の中の唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素により消化が始まります。

食道から胃へ到達し胃に停滞し、小腸に送られまでにブドウ糖単体となる様に分解されていきます。

この過程が少なければ少ないほど糖がエネルギーとして吸収される速度が上がるという事です。

であれば、ブドウ糖そのものを水に溶かして飲めば一番手っ取り早いじゃない?って思いますよね?

しかしながら、人間の身体は良く出来ていて、吸収には溶液の浸透圧によって吸収の速度が変化していきます。

溶液の糖分の密度が高くなると胃の中に停滞する時間が長くなり、それが腹部症状として現れてきます。

ガイドラインとしてはエネルギー・水分としてのドリンクの糖分の密度としては4-8%が推奨されています。

それ以上の高密度のドリンクは、腹部症状の出現のリスクが上がるためあまり勧められません。

また、エネルギー濃度を高めようと脂肪を取り入れると脂肪はさらに胃内の停滞時間が長くよりゆっくり吸収されるため、高濃度の糖分よりも更に腹部症状に繋がりやすい栄養素であります。

これは吸収が速いと言われるMCTも同じです。

MCTオイルの吸収の速さの違いは小腸から後の過程で他の脂肪酸と異なるためなので、胃内に留まる時間はさほど変わりないと思われます。

ただし、胃内にある消化酵素で他の脂肪酸と比べ分解されやすいため、小腸でも吸収されやすくなりエネルギー源として使われやすいと、私は認識しています。

なので、レースなどの運動中の補給食としてはあまり向いていません。

それこそ100マイル走などの何十時間と続く運動時であれば、1時間あたりの運動強度は下がるので、消化機能もある程度維持されている状態と思われますし、脂質代謝能力を高めるトレーニングを行なっていれば脂質の摂取も有効となると思われます。

 

ラソントライアスロンなどの持久系運動では脂質代謝能力は高め、体内に貯蔵されている脂質を利用しつつ、レース本番の補給食は糖分で補給する事が望ましいと言えます。

 

レースやトレーニング中によくお腹の具合が悪くなる方はいつものドリンクの糖分の密度や脂肪の含まれる固形食を補給として摂っているかを確認してみる事をお勧めします。

 

話が逸れてしまいましたが、モルテンの糖分の密度は16%となります。

そうなんです、今までのスポーツ栄養の概念から考えるとあり得ないんです。

 

ではなぜモルテンは推奨量の倍の密度で問題なくエネルギー補給ができる様になったのか??

 

モルテンに含まれるアルギン酸ナトリウムとペクチンが胃酸と反応し、phが下がる事で溶液がゲル化され、糖の粒子をコーティングし胃内に留まらず小腸へ素早く送られる様になり、小腸でエネルギー源として吸収されるという流れ。

 

なんだそれ!?

 

って感じですよね笑

 

ただそういったことで、結果も出ている物で、同じ様な反応を用いた経管栄養剤がだいぶ前から商品化され医療の場でも使われています。

私は血糖値の維持のために確かな手応えを感じているため、値段は高いですが勝負の時には使用する事としています。

 

今回はエキスポでモルテンさんのショップがあり、セットでだいぶ安く買えました!!

 

モルテンはじめ吸収の速い糖分は血糖値の急激な低下を防ぐための物です。

心拍数が高い状態が長く続く時や高出力を頻回に出す場合は糖がエネルギーとして使われる割合が高くなります。

心拍数が比較的低い状態での持続する運動時には体脂肪がエネルギーとして使われる割合が高くなります。これは日常生活において脂質酸化能力を高める事で糖質代謝優位か脂質代謝優位化が変わると言われているので、そういった所を見極めながら補給食の選択をすると良いと思います。

運動中も心拍数やパワーメーターを確認しながら高出力時や高心拍時には早めに吸収の速い糖分の補給をするとエネルギーの維持に繋がると思われます。

 

逆に吸収がゆっくりで血糖値が上がりづらい糖分の補給としてトウモロコシデンプンを使用している理由としては、これは血糖値を上げず脂質代謝の妨げにならず、かつ、高分子で比較的高濃度でも浸透圧を低く保つ事ができるため吸収に優れます。

エネルギーと一緒に水分の吸収にも繋がるので脱水の予防にもなります。

 

BCAAが配合されているアミノバリューと混ぜる事で運動中のBCAAの補給にも繋がる様にしています。

色々アミノ酸配合のドリンクがある中でアミノバリューを選ぶ理由は信頼性が高い事。

アミノバリュー大塚製薬の商品で電解質の配合なども考えられて作られている印象があります。

大塚製薬は食品もそうですが、古くから輸液製剤を作っている会社です。電解質はじめ栄養の補給に関しての研究や情報は参考になりますし、個人的に信頼性が高いため使っています。

 

このドリンクは、トウモロコシデンプンとアミノバリューを合わせた糖質の割合を8%の濃度になる様に2L用意しました。

トウモロコシデンプンは他にも小袋に小分けにして用意しウエアのポケットに忍ばせました。

 

レース当日の記録をと思ったのですが、補給食について思った以上長くなってしまったので今回は栄養編という事で!

 

レース当日の記録も近いうちにアップしようと思っています。

 

それでは!