1型糖尿病のトライアスロン、血糖値、栄養日記-アイアンマンコナを目指して-

一型糖尿病20年目の管理栄養士です。アイアンマンコナ出場を目指してトレーニングの様子や血糖コントロール、栄養管理についてアップしていきます。

IRONMAN PHILIPPINE 2024へ向けて①

皆さん、こんにちは。

 

前回は佐渡Aタイプ結果そして2023年シーズン振り返りのような内容でした。

 

今回は来年に向けた話をしたいと思います。

 

まず仕事の都合で今年最大の目標であったIRONMAN  Malaysiaを辞退し、IRONMANへの挑戦をどうしようかと考えていました。

IRONMAN Malaysiaの辞退を検討している際、色々調べていると同じアジアのレースであれば1年以内に開催されるレースへ参加権を移行できる事が判明。

移行出来るレースは、70.3のフィリピン、韓国、台湾そしてIRONMAN フィリピン。

フルディスタンスのIRONMANはフィリピンしかなかったため、KONAの挑戦としてIMフィリピンへ参加権を移行する事としました。

特に手数料なども無く、参加費に差額がある場合は差額分を支払うのみでした、

IRONMANレースはエントリー費だけで10万円を超えるので、キャンセルとなると30%しか戻ってこないこととなっていたため、経済的にすごい助かりました。

 

もし、IRONMANのレースにエントリーしたけど都合が悪く辞退を余儀なくされた方いましたら、「IRONMANTransfer」で検索すると公式サイトから手続きできます。

 

恐らく、IMフィリピンは6月の第1週の日曜日の開催。2024年KONAの出場権も用意されていると思われます。

 

改めまして、IRONMAN PHILIPPINE 2024で2024年IRONMAN KONAを目指します!!

 

ただ懸念されるのは仕事の影響。

このままズルズル八丈で生活していても難しい様に感じますが、そこは抜きにしてトレーニング計画を再度考え直す事に。

 

昨今トライアスロンのロングカテゴリーでパフォーマンスアップを図るとなると注目されるのはノルウェーチームのトレーニング理論。

また、ベーストレーニング重視で高強度や中強度のトレーニングの割合を少なくする事が重要視されているようですね。さらに強度としては血中乳酸値を測りそれを指標としながらトレーニングを計画する事がトレンドのようです。

おそらくそこまで徹底した管理のトレーニングは一部のトップアスリートでしょうが。

血中乳酸値より手軽なものとしては深部体温の計測と暑熱順化もトレンドになっているようですね。

 

しかしながら私の場合は、あくまで血糖値のコントロール目線ではあるので、まずはそこから考えなすことが必要と思っていました。

今シーズン血糖値に関して一番気になっていたことは、以前と比べ運動時の高血糖になる頻度が多い事。

言い方を変えると、ちょっとの糖分の補給でも血糖値が上がってしまうという事。

以前は高濃度のジェルやドリンクを常に摂ってないと低血糖になってしまう事が多く、運動時に限ってはどれだけ糖分から補給を摂っても高血糖になることは滅多になかった。

大体バイクで100kmを超える時やハーフ以上の距離を走る時は1000Kcal以上は持っていないと不安でした。

しかしここ1〜2年補給は大体余る。上記の距離ぐらいであれば200〜500Kcalあれば十分。何ならこれでも高血糖になってしまうという感じ。

今シーズンのレースはミドル1レースに、ロング2レース。

ミドルの廿日市宮島のトライアスロンでは、成績はまずまずでしたが、レース中の血糖値は200を超えていたし、皆生では最終的に300を超えてパフォーマンスの低下を感じた。佐渡の時はしっかりと測定できていなかったのですが、恐らく200前後で推移し、後半さらに上がってきた印象。

 

まずはこの血糖値のコントロールをどうするか?

 

この1~2年で血糖値について一番強く感じたこと。

それは、レース中よりも日々のコントロールの重要性。

レース中の血糖コントロールも重要なことは間違いありませんが、日常生活でいかに血糖コントロールを良好に保てるかがとても重要に思うようになりました。

具体的な要素を上げるとすると

 

①スケジュール通りにトレーニングを行えるか否かは血糖値のコントロールが鍵を握る。

②血糖値の変化がエネルギー代謝の基質に大きく関わっている。

③レースの補給戦略をより確実なものに。

 

以上の3点が私が考える理由

 

それでは以上の3つの要素について解説していきたいと思います。

 

①スケジュール通りにトレーニングを行えるか否かは血糖値のコントロールが鍵を握る。

これはここ1~2年で一番感じたことです。

特に感じた時期は糖質を主体に食事管理をしていた時です。

日本スポーツ協会のアスリートの栄養摂取と食生活やNSCAのニュートリションガイドには持久力競技者の中~高強度のトレーニング時には1日の炭水化物の目安量として7~10g/体重(㎏)の摂取が推奨されています。

私の体重は平均すると65㎏前後、競技としての主観的なベスト体重は62㎏。

62~65㎏の体重と考えると1日当たり500~650gの炭水化物の摂取が目安となります。

ご飯で換算すると3合から4合のご飯が目安になりますが、食事には主食を抜いたとしてもおかずだけで20~30gの炭水化物が含まれている場合が多いためそれを差し引くと1食あたり1合というのが大体の目安になります。

1型糖尿病の場合、炭水化物1gあたりで血糖値が5㎎/dlの上昇があると糖尿病専門医の江部先生著「糖質制限食パーフェクトガイド」に書かれています。

これはあくまで目安で、科学的根拠がないようなガイドラインとおもわれるのですが、私の経験上結構当てはまっているので私は参考としています。

それを目安に考えるとご飯1合で650㎎/dlの血糖値の上昇が考えられます。

このくらいの炭水化物量になるといくら炭水化物量で血糖上昇の値を推定しそれに対してインスリン効果値を目安にインスリンを投与しても、その日その日で血糖値が高くなったり低くなったり...

また、食後1時間、2時間値で変動の幅が大きく、また下がりきらず、200㎎/dl台の時や逆に下がりすぎて食後に低血糖になる時も多く、この食後の低血糖がかなり厄介で、低血糖からの反動でその後高血糖になり、この大きな変動が体調不良や回復の遅れ、身体のだるさにつながりトレーニングが滞ることがありました。

特に夕食後の時間にそのような傾向がみられ就寝中に高血糖になり尿意で目が覚めて追加打ち、追加打ちが効きすぎて明朝低血糖になることや、そのまま目が覚めず300㎎/dl前後の高血糖で目が覚め朝のトレーニングが滞ることも多くありました。

仮に血糖値が200㎎/dl以上の時に無理にやろうとすると、筋肉の強張りが強く、体が硬くなり、特にランニング時には関節の負担が懸念されました。

忙しい時は時間もないので、結構無理して血糖値を無視してトレーニングをすることもあり、膝や腰などの関節や筋肉そのものにもダメージをおってしまうことがあり、昨シーズンからこの点は反省点と感じています。

一般アスリートとなるとグリコーゲンの回復を考え要所要所で炭水化物を適量摂り、合わせてたんぱく質の補給も行うことが重要と考えられるのですが、1型糖尿病の場合この点に関してどう対策をとっていくか?

ただし、これはインスリン投与との兼ね合いもあるので、一概に炭水化物の摂取量の問題と断定できないですし、上記の炭水化物量でもコントロールするすべもあるでしょう。特にインスリンポンプであれば管理がしやすいのか?なんてことも考えたこともあるのですが、インスリンポンプを使用したこともなく、今更ポンプに変えるのも面倒だなと感じます。

いずれにしても、いくらHbA1cが良い数値でも炭水化物の摂取により血糖値の変動幅にの影響に振り回されていた事は少なからずありました。

そのため血糖値の変化をフラットすることにし、高血糖低血糖を無くすことが、トレーニングの回復にも繋がりますし、何より、倦怠感や体のむくみや筋肉の強張りによるトレーニングのスキップの防止、ケガの予防にもつながり、今までよりトレーニング効率が上がると考えています。

 

②血糖値の変化がエネルギー代謝の基質に大きく関わっている。

エネルギーの基質として、大きく分けると糖質、脂質の2点があるのは多くの方が理解していると思います。

しかしながら、両方とも効率よく使いこなせればよいのですが、中々そういうわけにもいかないのが現実。

①では炭水化物の摂取がグリコーゲンの回復に重要な役割を果たしていると話しました。グリコーゲンというのは身体が直接エネルギーとして使えるグルコースブドウ糖)が下記のようにいくつも連なった状態のもの

要するにグリコーゲンは身体に蓄えられている糖質エネルギーということになります。しかしながらグリコーゲンは身体の中に蓄えられる量が限られており、主に筋肉や肝臓に概ね400gしか貯蔵できません。エネルギーに換算すると糖質は1gあたり4Kcalのエネルギーとなるので体に蓄えられているグリコーゲンのエネルギー量は1600Kcalとなります。

持久系スポーツでは消費カロリーはひとレースで1600Kcalを大きく上回り、日々のトレーニングでも1600Kcal以上の消費は日常的にあると思われます。

そのため、運動中の炭水化物の摂取によるエネルギー切れの防止と運動後の炭水化物の摂取により早期にグリコーゲンの回復を促さないとエネルギー切れにつながることが考えられます。

その反面脂質は体脂肪として多くの蓄えができます。

そして、脂質エネルギーは1gあたり9Kcalで糖質エネルギーの倍以上のエネルギーを持っています。

少ない量でより多くのエネルギー源となる実はとてもエコなエネルギー源なのです。

さらに言ってしまえば脂質は体脂肪として無限に蓄えられることができます。

仮に体重60㎏のアスリートで体脂肪7%の方であっても4.2㎏の脂肪が蓄えられ4.2㎏の脂肪を脂質エネルギーとした場合37800Kcalものエネルギー量になります。

糖質エネルギーと比較すると23倍のエネルギー量になります。

これだけのエネルギーがあるのになぜ運動中にエネルギー切れを感じるのか?

それは運動中は主に糖質エネルギーが使われているからです。

そして、これは炭水化物の摂取が多いことで糖質エネルギーが主に使われるようになることがわかっています。

これは想像の話ですが狩猟民族や原始人では主な食料は果実や木の実、草花や獣や野鳥の肉などで栄養素でいうと、食物繊維とたんぱく質、脂質、ビタミンやミネラルが主な栄養源で、炭水化物は果実などから少量しかとっていなかったことが想像できます。

また、その日に食事にありつけるかどうかもわからず飢餓に備える必要があったと思います。

そういった環境要因から本来グリコーゲンをはじめとした糖質エネルギーは飢餓や生死の危機に備えた最後のエネルギー源の役割のはずなのです。

おそらくエネルギーの代謝の変化に関しては運動負荷による変化のほうが情報として多いかと思います。

運動強度が高ければ高いほど糖質エネルギーを利用する割合が増えてくる。なので運動強度の高い瞬発的な運動、原始時代であれば生死にかかわる一瞬の動き。

しかし現代では生成された糖分やお米や小麦製品があふれていてそれが主な食事のエネルギー源となっています。

そういった環境の変化に伴う食習慣の変化が身体のエネルギー代謝の変化にも繋がていることが示唆されます。

また本記事の初めのほうに記載しましたが血中乳酸値の測定による運動強度の設定についてはエネルギー代謝との関連も考えられます。

脂質を効率よく代謝できるようにトレーニングを通じて図っていくことは、多くのアスリートやトレーナーが考えていることと思います。

しかしながら、本質的には脂質を効率よく使用するには上記の通り食事管理が重要な要素であり、血中乳酸値による運動強度の決定と食事管理を行うことで脂質代謝の割合が増えてくることがいくつもの研究の結果でわかっています。

その食事管理とは糖質を制限し、インスリンの分泌量の減少に伴う血中インスリン濃度の低下を促すこと。

これは①で記載したグリコーゲンの回復をはじめとしたアスリートの栄養管理としてのガイドラインに反しているものとなり、今日でも多くの栄養士、スポーツ医師、トレーナーなどが否定的となっているのは周知のとおりと思われます。

これについては、また後に詳しく解説していこうと思いますが、少なからず血糖値の変動をできる限り抑えることが脂質代謝効率を高めることを示唆し、またそれには短期間の制限では効果は見らないことがわかっています。

以上をふまえ日々の食事管理を通じた良好な血糖コントロールを続けることの重要性を感じているということです。

 

③レースの補給戦略をより確実なものに。

今シーズンレース中の血糖値については、参加した3レースすべて、低血糖どころか200㎎/dlを超えて推移していたという事。

これは今までの経験から運動中の果てしない血糖値の低下を懸念しての対処であり、レースにおいてはどうしても低血糖を懸念して糖質の補給を優先に考えてしまう頭になってしまいます。

よくよく考える日々のトレーニングでは上記の通り100㎞3時間程度のバイクトレーニングでは200~500Kcalあれば十分ですし、ランにおいてもハーフくらいであれば200Kcalで事足りることが多い。スイムにおいてはほぼ無補給。

ただそれでも、日によっては低血糖になることが多くなったりもするのですが、これはおそらく糖質主体の食事とそれに応じたインスリンの投与量の影響が強く感じられます。

そのため、一定した血糖コントロールと食事管理と併せて、トレーニング時の補給量と血糖の変化をモニタリング、アセスメントを繰り返し最適な糖質濃度と量を明らかにしレース中の高血糖低血糖によるパフォーマンスの低下の防止につなげていくことが課題となってくると思っています。

 

以上の3点が日常的な血糖コントロールの重要性についての考察であって来シーズンのKONA出場に向けてのトレーニングを計画するにあたり重要な要素になってくると思っています。

 

記事が長くなってしまったので次回以上を踏まえたうえで具体的なプランについてまとめた内容について記事にしようと思います。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

 

それではまた。

 

参考文献:日本スポーツ協会 アスリートの食事・栄養/NSCAスポーツ栄養ガイド/糖質制限食パーフェクトガイド(江部康二著)/PRIMAL ENDURANCE(MARK SISSON著)/LOW CARBOHYDRATE PERFORMANCE(JEFF S. VOLEK,STEPHEN D. PHINNEY著)