1型糖尿病のトライアスロン、血糖値、栄養日記-アイアンマンコナを目指して-

一型糖尿病20年目の管理栄養士です。アイアンマンコナ出場を目指してトレーニングの様子や血糖コントロール、栄養管理についてアップしていきます。

トレーニングにおける栄養管理の考え方

今回は本職の栄養について考えていきたいと思います。

栄養管理の土台となるエネルギーの概念について、減量やボディメイクなどの体重コントロールのための基本的な事をまとめてみました。

 

昨今ではSNSなどの普及で、プロテインサプリメント、スーパーフードなどの健康食材などを勧められることや、ネットの広告やテレビの情報も溢れています。
そんな中、何を取り入れればよいか?など迷う事もあると思います。

 

特にボディメイクやダイエットを目標としている方には、栄養管理は不可欠ですし、アスリートや競技技術の向上を目標としている方では、トレーニング中、リカバリー、競技中など時期やシチュエーションによって管理方法は変わってきます。

 

栄養管理の土台となるのは、食事の摂取と活動の消費のエネルギー量を考慮する事です。

この概念が無いと、どれだけ身体に良いものを摂っていたとしてもそれ以上にエネルギーの過剰摂取やその逆の低栄養により身体に負担をかけてしまいます。

 

IDDMで長年血糖コントロールをしている方なら経験上、十分理解していると思います。

 

そして、これは低糖質食、ケトン食、低脂肪食、高たんぱく質食などあらゆる食事管理法でも同じ事が言えます。

またアルコールもエネルギーを有している有機物です。アルコールのエネルギー量も忘れずに加味しましょう。

 


人間が利用するエネルギーは「代謝エネルギー(metabolizable energy:ME)」と言われるもので、単位を「キロカロリー(Kcal)」であらわされています。日常的には単位の「カロリー」と呼んでいる人も多いですが、本来は「エネルギー」と呼ぶことが正解です。

人間が食物から得られるエネルギー源は「炭水化物」「たんぱく質」「脂肪」「アルコール」の4つから供給されており、この4つの栄養素のエネルギー量を個々の活動で消費したエネルギー量に合わせて食事を構成することが栄養管理の基本となります。

 

人間の1日を通しての消費エネルギーは、BMI、体組成、年齢、性別の違いにより基礎代謝量が決まり、基礎代謝量と一日の活動量によって消費エネルギー量が決まります。

 

その他の小さな要素としては、ホルモンやストレスの影響や食後の栄養素の消化吸収などで消費されるエネルギーの「食後熱産生(postprandial thermogenesis:PPT)」や「食事誘導熱産生diet induced thermogenesis:DIT」などの影響や「寒冷誘導熱産生(cold induced thermogenesis)という体温の低下に伴い基礎代謝の増加がみられることもあります。
また「過剰運動後酸素消費:excess post exerciseoxygen consumption:EPOC」という高強度のトレーニングや激しい運動後の最大48時間で基礎代謝量が増加する効果も分かっています。
僕の経験上この「EPOC」の効果が一番感じられるのは長距離のヘルクライムのバイクトレーニング後です。

基礎代謝量を測定するには、体重・年齢・性別などから推定式により算出できますが、計算式は簡易的なものから、複雑なものまで色々あります。

僕が使っている計算式は「ハリス・ベネディクトの式」です。

ネットで検索すれば計算してくれるホームページもありますので、調べてみて下さい。

計算式はかなり複雑で、男女別になっています。

体組成計でも測定できるものがありますので、体組成計をお持ちの方はその結果を元に下記の通りに必要エネルギー量が算出できます。

 

基礎代謝量が分かりましたら、基礎代謝に下記の表にある活動量に応じた係数をかける事で、およその消費エネルギー量を算出することができます。

 

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例えば、女性でinbodyの基礎代謝の結果が1550Kcal/日と測定され、デスクワークで週4時間の運動の習慣がある方であれば、

1550Kcal×1.5=2325Kcal/日

と1日の消費エネルギー量が算出でき、この消費エネルギー量を目安に食事エネルギー量の管理ができると、現在の体重が維持できると考えられます。
(注:あくまで推定式ですので、人によって誤差は生じます)

体重維持が目的であれば、算出されたエネルギー量を目安に食事を構成すれば良いのですが、減量や筋肥大のための増量を目的とした場合は、その目標に応じた調整エネルギー量を考慮し、食事エネルギー量を決める必要性があります。

 

調整エネルギー量に関しては、減量と増量とで指標が変わってきます。

 

まずは減量を考えた場合
脂肪組織は約7000Kcal/kgのエネルギーを有しています。(注:7200Kcal/kgと言われることが多いですが、約7000kcal/kgと表記した理由は長くなるので省略します。単に端数を切り捨てているわけではありません)
7000Kcal分のエネルギーを脂肪組織から代謝すると脂肪組織1kg減少することとなりますので、脂肪組織を5kg減少させたいと考えた場合は5kg×7000Kcalの35000Kcalを代謝することができれば良いと考えられます。
減量に必要な調整エネルギー量の35000Kcalを減量期間の日数で割ると一日の調整エネルギー量が算出され、それを一日の消費エネルギー量にマイナスすることで減量のための1日の必要エネルギー量が算出できるですが、ここで考慮すべき点は減量の期間です。

35000Kcalをどのくらいの期間で調整するのか?

例えば1カ月間で5kgの減量を目標とするのであれば35000/30=1166Kcalが調整量となり
2カ月間を目標とするのであれば35000/60=583Kcalが調整量となります。

調整エネルギー量を上手く減らしたとしても、すべてが脂肪組織から代謝させているわけではありません。身体の組織の体脂肪と除脂肪組織(水分を含んだグリコーゲンやたんぱく質など)エネルギー密度は約1000Kcal/kgとなり、脂肪と比べると1/7の密度の差があります。
例えば、運動で消費したエネルギーが1000Kcalだったとして、その時の運動のエネルギー源が脂肪以外のアミノ酸やグリコーゲンから供給されたものであれば、アミノ酸とグリコーゲンの代謝から体重が1kg減った事になり、脂肪ではなく、体内のグリコーゲンの枯渇や、タンパク質の分解によるアミノ酸をエネルギー源として代謝し体重が減ったと考えられます。

習慣的に体重測定や体組成の測定をしている方だと経験があると思いますが、1日で1~2kg体重が落ちているときがあると思います。こういった短期間の体重減少は、上記の通り脂肪以外の身体の組織を分解してしまった結果で良いとは言えません。その分、脂肪の合成を促してしまう方向に進んでしまう事もあります。

 

しかしながら比較的緩やかで、体重の変動を少なく管理した上で、週当たり0.5㎏以下の減量(高度肥満(BMI35以上)の方であれば週1kgぐらいを目安に)だと比較的脂肪組織が優位に使われ体脂肪を落とす事に繋がると考えられます。


週当たりで0.5㎏の減量と考えると、調整カロリーとしては現体重維持の必要エネルギー量から500Kcal/日の調整が目安となります。

 

以上で解説した通り、体重が減ったとしてもすべてが脂肪組織から代謝されたものではなく、たんぱく質や多糖類のグリコーゲンの分解もあるので、その分は食事から補う必要があります。
減量中は、たんぱく質やグリコーゲンも必要以上に分解している事が考えられるため、必要量の確保が必要です。特にトレーニングの量を増やし、疲労が蓄積している状態では免疫力が下がる事で、感染症を始め体調不良を起こしやすくなる事やエネルギーの代謝が更新している状態で、エネルギーの代謝に関連する補酵素などが必要となってきます。

それらの材料となるのがビタミンやミネラルで、その摂取源となる野菜を始め、肉魚、果物など、多種多様の食材をバランスよく取り入れる事がとても大切です。

そのために1日30品目以上食べましょうと言われています。

 

とても長い文章となってしまいましたが、
結論を言うと体重管理を始めとした食事管理の基本はエネルギー量を管理した上で、たんぱく質と炭水化物、野菜料理をしっかり取り入れ食事のバランスのとれた食生活が習慣づくと効率的に健康で理想的な身体の作りや機能をつくることができることと思います。

【まとめ】
①トレーニングの目的・目標を明確にする。
②現在の身体の状態(最低限身長・体重)を把握し、基礎代謝を算出する。
基礎代謝量に活動係数をかけ、消費エネルギー量を知る
④目的・目標に応じて調整エネルギー量を消費エネルギーから差し引きし必要エネルギー量を算出する。
⑤必要エネルギー量を超えないように、炭水化物源(米・パン・麺など)・たんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品)・野菜料理の最低限3種類で構成された食事の習慣をつくる。

 

今回はあくまで一型糖尿病ではなく、一般の方向けの栄養管理についてまとめました。

一型糖尿病の場合はこれに対してカーボカウントを実践する事で良好な血糖コントロールに繋がると思われます!